2010年 決算インタビュー
- 前2009年度(=2010年3月期)は、新ブランド「エステナード(ESTENAD)」の立ち上げなど、事業ポートフォリオに大きな変化があった1年でしたね。
- そうですね、2009年度は、磐石な事業基盤構築に向けての取組みを多面的に展開した1年と言えます。結果、これまで健康食品「豆乳クッキーダイエット」のみに依存していた事業ポートフォリオに、美顔器エステナードソニックと専用の化粧品ホワイトソニックジェルが新ブランドとして加わり、また、2008年度に引き続き、余剰乳加工で大きな国内シェアを持つ子会社 (株)弘乳舎(2007年グループ入り)が収益に安定的に貢献するなど、ビジネスモデルにも拡がりが出てきました。
このような展開の背景には、「豆乳クッキーダイエット」事業でつまずいたことへの深い反省があります。上場して2年目の2006年度、ほぼ「豆乳クッキーダイエット」だけで売上高100億円弱、営業利益7億円弱を達成した健康コーポレーション(株)でしたが、翌2007年度にかけ、クッキー拡販のための積極投資を行いました。ところが、売上が想定通りに伸びず、業績悪化による大幅な軌道修正を行うに至りました。2007-2008年度の2年間で、200トンものクッキーの過剰在庫を廃棄しました。これは原価で2億円に相当します。また、通販会社の場合、多くの費用を変動費化するのが一般的ですが、「豆乳クッキーダイエット」が主力商品だった2007年度は、広告宣伝費のほとんどを年間契約で固定化していました。このため、売上が減少したにも関わらず広告宣伝費を減らすことができず、売上高に対する広告宣伝費率が70%近くまで上がってしまいました。現在は年間契約数を絞り、広告宣伝費を40%以下にコントロールしていますので、売上が仮に1/5以下になったとしても、黒字を確保できる収益モデルに変わっています。広告宣伝に加え、成長を見越した先行投資も多額の費用計上につながりました。たとえば、チラシ用資材なども事前に大量調達していたのですが、これら先行投資を一旦貯蔵品として資産に計上、費用として認識させていなかったために売上が予想通りに伸びなかった時点で費用化され、収益を大きく圧迫しました。こういった失敗に対する反省をもとに、2008年度以降、事業構造の修正を図り、2009年度、健康ホールディングス(株)を含めたグループ会社全7社が黒字化しました。 - 事業構造の修正に向けて、具体的にはどのような施策を行ったのですか?
まず、事業モデルの多様化が挙げられます。例えば豆乳クッキーのようなダイエット関連商品は、種まきから回収までの期間が短い短期回収型モデルです。この事業には、相応の販促費投入も必要です。一方、毎日使う「エステナード」のようなリピート性の高い商品は、種まき後、時間をかけて回収する中長期回収型モデルと言えますが、販促費は抑制でき、安定的な収益を享受できます。毎日摂取する健康食品などもこのモデルに属します。短期回収型モデルの「豆乳クッキーダイエット」に加え、中長期回収型モデルの「エステナード」を立ち上げたことで、事業構造はより安定化しました。通販が主体の美容・健康関連事業とは異なりますが、ニッチなB2B市場で高いシェアを持つ弘乳舎による食品関連事業がポートフォリオに加わったことも、事業構造の安定化に大きく貢献しています。- また、安定した事業展開を支える仕組み作りを強化しました。具体的には、業務プロセスの見える化です。先ほどお話しましたとおり、クッキー事業のつまずきは、資材などの先行投資を含め、在庫管理の大切さを改めて教えてくれました。それまで、成長や損益(P/L)を意識しすぎたばかりに、在庫はもちろん、先行投資のために積みあがった貯蔵品によるバランスシート(B/S)の肥大化や、売上計上時に遅れて発生する費用がもたらすキャッシュフロー(C/F)の劣化をないがしろにしていました。こういった課題に取り組むため、この1年を通じ注力したのが、資材投資などを貯蔵品として資産計上せず、早めに費用化することです。そして、それらが本当に必要な投資なのか、投資の方法が正しいかなどをタイムリーに分析できる仕組み、「見える化ボード」の構築と徹底です。これらの施策により、現場スタッフがP/Lのみならず、B/SやC/Fも意識できるようになりました。加えて、適正在庫期間を2ヶ月以内に管理する精度も上がりました。方法見直しの事例では、従来国内で調達してきた「エステナード」の包装用資材を中国で調達、品質管理も担保した上で、費用を半分以下に抑えられるようになりました。このコスト削減効果は、今2010年度から顕在化します。
- 今年度の事業展開について、新たな取組み事例を教えてください。
- 前年度は、事業構造の安定化に向け、基盤整備を推進した1年でした。今年度はこの基盤をより強固にし、更に飛躍するための大切な準備の一年と位置づけています。
そのために、グループの通販事業を担う健康コーポレーションの「新商品開発部」や「未来創造プロジェクト」といった新商品開発部隊に資源を積極投下し、年間20-30の新商品を展開できるよう、新商品開発を強化します。そして、「豆乳クッキーダイエット」、「エステナード」に続く3本目、4本目の柱を今期中に立ち上げたいと考えています。
今年に入ってから4月までに、女性向け商品の美容ドリンク「わたしのプラセンタ」や補正下着「すらっとNightスーツ」を発売しました。また、性別にかかわらず中高年のお客様を開拓するための新商品も導入しました。グルコサミンサプルメント「悠々節」、黒酢サプリメント「元源黒酢」などがその事例です。5月以降も引き続き、様々なターゲット層に向けて新商品を導入していく計画です。マーケティングについては、健康コーポレーションと言うコーポレートブランドで売るのではなく、商品ブランドとして個別に展開していきます。近年通販市場では、性能や機能をわかりやすく訴求する専門店型アプローチや単品通販が主流になっています。品揃えを強みとしてきたカタログ通販や総合通販が苦戦をしているのも、この変化によるものと感じています。当社としては、このようなトレンドを追い風に商品ブランドを複数同時展開できる事業インフラを構築するため、投資を加速してまいります。- 専門性強化、新商品開発の具体的施策として、「エステナード」の美顔器サンプルの本格導入、そしてシリーズのラインアップ拡充があります。「エステナード」ブランドは、"女性一人に一台"を目指し、あらゆる年代の女性をターゲットとした事業展開を強化していきます。前年度、化粧品を代替する美顔器という新たな市場を開拓しましたが、今後はこの市場をより大きく育てていきたいと思います。そのための施策として、化粧品のお試しサンプルポーチのような感覚で美顔器を試していただくためのジェル付サンプルセットを開発、インフォマーシャルなどのテレビ広告を通じた販売を5月から本格化します。このお試し美顔器は、仕様を限定してコスト削減を図っていますが、加えて郵送に適した形状を工夫するなど、お客様一人当の限界費用低減を徹底的に追及しました。昨年末より既にトライアル販売を開始していますが、結果は良好です。このお試し美顔器を通じ、より多くのお客様が「エステナード」ブランドに親しんでくださることを期待しています。ラインアップ拡大については、美白効果の高い現行のジェルに加え、しわとりや引き上げ効果が高いジェルやニキビ予防用アクネジェルなどの発売を予定しています。また、クレンジングや洗顔剤、美容液といったジェル以外の周辺商品の拡大も始まります。今後はお客様それぞれの悩み別にアプリケーションを開発し、市場を深堀りしていく計画です。
- 事業構造強化のための施策は継続しますか?
前年度特に注力した「見える化」に向けての取組みに続き、今年度は情報共有化のための組織作りを加速します。この4月、健康コーポレーションに経営企画部を設立し、社内の上下・左右の情報を共有するための組織としました。現在の事業環境は日々刻々と変化しています。今日を昨日と同じ視点で見ていると、大切な変化に気づくことは出来ません。私は、当社が今後とも継続的な成長を実現するためには、情報共有が最も重要だと考えています。変化していることを把握し、最適な意思決定を行うためには、社長である私が打つ手や会社が組織的に打っている手など、マネジメントが持っている情報を全社的に共有する必要があります。これはマネジメントレベルでのアクションの背景を理解することを意味しますが、背景があっての情報を持つことで、次の一手につながる選択肢が変わってきます。意思決定の精度も上がってきます。そして、最終的には組織の効率化につながります。健康ホールディングス・グループの中核企業である健康コーポレーションに経営企画部を創設した背景には、このような考え方があります。- 情報共有について、まずは健康コーポレーションを中心に基盤を確立していきますが、将来的にはグループ全体にその動きを広げて行きたいと考えています。4月28日付ニュースリリースで発表しましたが、美顔器ビジネスを牽引している子会社(株)ジャパンギャルズ、Bijin(株)の役員に健康ホールディングス株式の第三者割当を実施しました。このことが、グループレベルでの情報共有の一つのきっかけになればと思います。今後徐々にではありますが、グループという視点から、このような取組みを強化したいと考えています。
- 最後に、株主・投資家の皆様に向けて、メッセージをお願いします。
好調な業績と上場3周年を記念して、前年度50円/株の配当を実施しました。単体の配当性向については20-25%を目指し、今後とも業績に応じた配当を継続する意向です。一方で、現在当社は次期成長をにらんで投資が先行する局面にあります。また、回復したとは言え、自己資本比率はまだ16%と低い水準です。今後なるべく早い時期に、まずは自己資本比率30%を目指し、財務体質の強化を図ってまいります。財務面を含めた磐石な事業基盤を構築した上で、M&Aを中心にレバレッジを効かせた事業投資を積み上げていきたいと考えています。- 繰り返しになりますが、現在は財務面を含めた事業基盤をさらに強固にするため、準備を優先させる大切な局面だと考えています。今年度、「エステナード」ブランドの拡販を中心に売上高は伸長すると予想していますが、先行投資のため、特に年度前半、利益率の改善がないように見えるかもしれません。けれどもこれは、将来の力強い成長を実現するために必要な、当社グループの戦略的取り組みによるものです。この準備の一年が、当社グループを新たな成長局面に導くものと強く感じています。この点をご理解の上、中長期的な視点から、健康ホールディングス・グループを変わらずご支援、ご鞭撻くださいますよう、よろしくお願いいたします。
インタビュアー紹介
中野秀代(なかの ひでよ)
株式会社トリアス 代表取締役
上智大学外国語学部卒業。ソニー(株)において、海外の安全・輻射規格等の調査を担当。その後、外資系証券会社を経て、シティバンク プライベート・バンク・グループに入社。運用部門ヘッドとして、国内外の富裕層向け資産運用に特化した後、国内外の投資顧問において、企業年金、生命保険、投資信託等の日本株運用に従事。1999年、国内企業年金ユニバースで運用実績第2位。
2004年、株式市場における中長期投資促進のため、投資家と企業の架け橋を目指す(株)トリアスを設立。
非財務情報を重視する企業調査、上場企業と投資家をつなぐフォーラムやウェブメディアの企画・設営等を行う。現在は、時価総額300億円以下の上場企業に向けてのIR支援に注力中。
日本証券アナリスト協会検定会員。IEEE準会員。